美しい人〜とある真夏の夜に〜

Travis Japanとしめかけくんとわたし

夏に帰る

 

2012年に9人で結成されたTravis Japanは、8人になり、7人になり、この夏のステージを最後に6人になった。

 

正直私はこの夏のあの日で止まってしまっていて、まだちっとも前に進めていなくて、結局何も書き記すことができないままでいる。

月が変わり、1冊の雑誌で6人のTravis Japanの姿を目にした時、なんと言えばいいかわからない感情のまま涙が溢れてきて、記事を読めなかった。

翌日、心を落ち着けてやっと本文を読むことができたけれど、もちろんどこにも美勇人の名前は書かれていないし、事情も何一つ説明されておらず、インタビューテーマだけがまるで何かを暗喩するかのように「不安」だった。
何を語らせるつもりだろうか…私は正直動揺した。
事務所の意向もあるだろうし、美勇人については何も触れられないであろうに、と。

読みながら、8月17日のTravis Japan7人での最後の単独公演のことをぽつりぽつり思い出していた。
彼らの言葉とこの夏の姿がパズルみたいにはまっていく…

 

 如恵留くんのインタビューの答えはやっぱり…と頷く以外なかった。頼ってしまうから敢えてメンバーには相談しないようにしている、と。
前向きなコメントとして語ってはいるが、如恵留くんは文字通りの「重い荷物」以上の荷物を背負い込んでしまっている気がして、胸が痛くなった。
トラジャの中で最年長、Jr.歴も美勇人を除けば最長、礼儀正しくて、頭もよくて、アクロバットが得意、ついでに作曲・構成・振付もこなすオールラウンダーはいつだって期待に応えようとしてくれる。
夏の公演中もずっと如恵留くんはそうだった。必死に守ろうとしていた、俺たちのTravis Japanを。
そういう真面目さ、熱さが彼のいいところだから、裏切らないでいてくれる安心感と同時に、大きなものを背負ってしまった如恵留くんを守りたいという気持ちになった。六本木の交差点で美勇人担とそういう話をしていた。

でも、如恵留くんだけじゃなかった…
Travis Japanは一緒に立ち向かう仲間だと言うちゃかちゃん。
不安を与えないようにとメンバーには相談しないちゃかちゃん。
振付をし、コントの台本を書き、MCで表に立つ…Travis Japanのために頑張ってくれているちゃかちゃんがオーラスで涙で言葉につまった姿は衝撃だった。ちゃかちゃんが泣くなんて…と思ってしまったくらい彼はいつも明るいから。
ちゃかちゃんは踊らせたら飛び抜けてうまいのに、MCになった途端いつもおちゃらけてふにゃふにゃしていて楽しい。それでいていつもどこか俯瞰していて、きちんと話を回してくれる。誰がどう見てもうちのトップダンサーであり、トップMCなのに、俺が俺がと前に出てこない。ボケまくるメンバー達を見ているのがとにかく楽しそうだった。メンバーのことがとにかく大好きなんだなぁと思った。宮近海斗っていう男は本当に優しい。
でも本当は時々自分もつらいんだよね…?
以前、相棒が欲しいと雑誌のインタビューで答えていたのを思い出した。シンメだった顕嵐は隣にいない…
抱えているものの大きさを思わずにはいられなかった。
そんなちゃかちゃんが話を聞いてもらうだけでいいと語る岸くんってなんだか想像できたし、ありがたいなぁと思った。ありがとう…岸くん。

しずかじはこのインタビューの回答で、真面目にお仕事に絡めた不安なことを答えているけれど、そこに感情の揺らぎを見せない明るさがあって、強い想いを抱えるが故に返って儚さすら感じるTravis Japanを支えてくれているなぁと感じた。うまく言えないけれど、健全なのだ。普段はお茶目で笑いをとったりするかわいい弟組。でもこの夏見たしずかじは年齢よりずっと大人びていて、安定感のある二人だった。

閑也は振付という自分のやりたいこと、得意なことをしっかりやり、MCでは永遠の反抗期キャラも板についてきて笑いをとったりしていて、照れくさそうだったけれど、確実に手応えを掴んでるんだなぁと思えた。

朝日は、ファンにはお馴染みの観客参加型クイズ&トークコーナー"かじリーグ"といい、他グループ・他担にも知れ渡りつつある顔で魅せるダンスといい、本当に頼もしいエンターテイナーだった。

引っ張ってくれるのえちかと、支えるしずかじ。
のえちかの心がポキッと折れてしまうことがこわかったから、二人の存在はとても頼もしかった。
すすり泣きの響くオーラスで、明るすぎるくらいの閑也と朝日のテンポの良いやり取りは印象的だった。
私も泣きながら二人の明るさに笑った。でも二人の頑張りにもっと涙が溢れてきたのも事実だった。

私はグループについて仲良しの集まりではないと思ってはいるものの、ビジネスパートナーでありながら仲の良さが滲み出るのがTravis Japanの良さだとも思っている。
かつて召集された当初はそうではなかったと後々雑誌で本人達が語っていたけれど、最近は本当に仲がいいなと思う。私がまだ彼らのことを知らなかった頃から、彼らはたくさんの時間を一緒に過ごしてきているんだものね。
だけど、こういうことになって、お互いのことを思うが故に負担をかけるまいと相談もしなくなってしまうとしたら…
そのうちいつぞ空っぽになってしまわないか…
余計なお世話なのは百も承知だが、私の不安は増していた。

しかし、そんな不安を拭ってくれたのは、実は中村海人だった。
ありのままの人間としての感情、リアルな闇の部分を一番さらけ出してくれる。インタビューでもその様子が伝わってきた。メンバー全員がそうだったらきっと大変だけれど、みんなが空気を読みすぎる中で等身大の男の子でいてくれるうみんちゅのお陰で、ちゃんとみんなの心が通うような気がした。
うわべでも作りものでもない本当の喜怒哀楽を見せてくれるうみんちゅがいるから、みんな気負わないで素に戻れる瞬間があるんじゃないかな…と。
この夏も変わらずにそうだったなと思い出した。うみちゃんが笑うと嬉しかったし、みんなの目が優しかった。
そんなうみちゃんが声を振り絞って最後に叫んでいた。
「俺らのこと好きかー!!!本当に好きかー!!!ついてこれるかー!!!そのままでいてくれぇーーー!!!!」
そのまま倒れてしまうのではないかと思ったくらいの渾身の雄叫びだった。全てを詰め込んだメッセージだった。すごく響いた。

最後にしめちゃんのこと。
しめちゃんは、どこまでも現実みを帯びない人。単独公演のオーラスもそうだったけれど、みんなを暗くさせないように空気を読んだことが垣間見えるのがしずかじだとしたら、しめちゃんはそんな作為すら感じさせなかった。
今回のインタビューも不安なものを訊かれてみんながお仕事のことを話す中で、仕事で不安はないとあっさり流し、セミとお化けの話をするしめちゃんって一見素っ頓狂に見える。またズレてるよって読者に笑われるのかもしれない。
でも、それでいいんだろう。
私達はみんなしめちゃんに転がされてるんだろうなと思う。
不安はないというしめちゃんの発言が本当か嘘かなんてわからない。本当だとしたらとても強い男だと思うし、仮に不安を抱えているのにそれを出さないでいるんだとしたら、それはそれでとんでもなく強い男だ。
私はしめちゃんはフワフワしているから掴めない訳じゃないと思っている。本人が意識してなのか無意識なのかはわからないけれど、私達にリアルなところを掴ませない。圧倒的シンボルとして存在している。
もちろん、それをフワフワしてて可愛い〜♡と受け取るもよし、強い男…!と受け取るもよし、そこは我々に委ねられていてしめちゃん自身は強要していない。
私達はその圧倒的存在にただ甘えて溺れていればよいのだ。

別な雑誌(ステナビ)で顕嵐ちゃんがアイドル像について「ふわふわして軽い感じに思われてるかもしれないけどそれでいい。闇を感じさせないのが本来のアイドルの姿。観てて疲れないのがアイドル」という内容を語っていて、そういう意識というか、考え方は本当にすごいなと思う一方で、私はそれすら語らない七五三掛龍也という自担に鳥肌が立った。

繰り返すが、しめちゃんはアイドルを完璧に演じ切っているだけでなくて、そもそも演じている生身の人間がいるということすら私達に感じさせないのだ。
たしかに天使のような微笑みで少し現実離れした受け答えをしたりするけれど、しめちゃんが天使なのは人間の生々しさの欠片も感じさせないところなんだと思っている。
Travis Japanで一番ボケているようで、実は全てを達観してるのかもしれなかった。
あの日の夜も表情ひとつ崩さなかったしめちゃんの胸の内を思って私は泣いてしまったけれど、その揺るがなさにいくらか救われていたのかもしれなかった。何も変わらない、と。

 


本当のところ、言葉にしなかっただけで夏が始まる前からこうなることはわかっていて、夏が来るのが怖かった。夏が来たら終わってしまう、そう思っていた。
メンバーが辞めたり抜けたりして、Travis Japanはどうなっていくんだろうとファンはみんな不安だったんじゃないだろうか。少なくとも私はそうだった。

 

そして、迎えた公演だった。
この夏の7人のTravis Japanは最高だった。
プレゾンで育って、ダンスが武器を公言し、バックダンサーとしても鍛えられてきた彼らが「俺みんなの声がなかったらGuys PLAYZONEまで踊り切れなかった」(しめちゃん)と言ったほどハードな公演だった。
彼らのエネルギーを全身で受けた。あの瞬間観客は全員仲間だったし、もっと言ってしまえば、Travis Japanとそのファンという構図ですらなかった。会場全体が一つだった。ものすごい熱気だった。
みんなが泣いていた。あのTravis Japanが好きで、そのままでいてほしくて。最高のパフォーマンスへの感動と感謝と終わってしまう悲しさで。
これまで聞いたアリーナやドームのどのアンコールにも引けを取らないくらいのアンコール…
そしてトリプルアンコールの後の拍手…
全てをあのまま閉じ込めたかった。
何も上書きできない完全なTravis Japanの姿として。
だから、どこまでもTravis Japanを追いかけ、応援しようという決意と裏腹に、このままTravis Japanは終わってくれないかと思ったほどだったし、何より終わってしまってもおかしくなかったほど美しかった。何もかもが。

 

だけど、あれから半月が経って思うことは、この夏の彼らの姿はこれからのTravis Japanを信じたいと思わせてくれるものだったなってこと。終わりなんてしなかった。
もちろん、この先の人生で、この夏のTravis Japanに何度だって想いを馳せるだろう。
でも、これからもTravis Japanは確かに前に進み続けるという決意はあの時既にあったんだなぁと今改めて噛み締めているし、この先ずっとアップデートし続ける彼らを見ることができるという期待が少しずつ私の胸の中に芽生え始めている。

 

最高の夏が終わって、最高の秋が始まる。